基板リワークの品質確保には、仕上がりを正確に検査することが求められます。目視では困難な微細な確認には、AOI(自動光学検査)による品質検証が不可欠です。本記事では、AOIがリワークの精度向上にどう貢献し、品質を支えているのかを解説します。
AOI(Automated Optical Inspection)は、日本語で「自動光学検査」と呼ばれる検査装置です。基本原理として、高解像度カメラで基板表面を撮影し、それを「良品」の画像データや設計データ(ガーバーデータ)と比較します。この比較により、データと異なる箇所を「不良」として自動で検出する仕組みとなっています。検査項目は多岐にわたり、部品の位置ずれ・欠品、はんだブリッジ、はんだ量の過多・過少、基板上の異物や傷などが対象です。製造工程で起こりうる多様な外観不良を、非接触かつ高速に検査できる点がAOIの大きな特徴と言えます。
AOIによる検査の核心は、高精度なカメラ技術と高度な画像処理アルゴリズムによって支えられています。装置はまず、基板上の指定領域をスキャンするように撮影を実施。その際、単なる上方向からの撮影にとどまらず、複数の照明角度やアングルカメラを活用することで、部品の影に隠れやすい微細なはんだブリッジやBGA側面のフィレット状態まで把握できるよう工夫されています。撮影データは即座にコンピュータへ転送され、あらかじめ設定された検査ロジックや良品データとの照合が行われる仕組みです。基準との差異(はんだ形状、部品印字、異物など)が見つかると、AOIが不良と判断し、オペレーターに位置と内容を通知します。
電子部品の小型化・高密度化が進む中、目視による検査にはさまざまな課題が生じています。たとえば、0402サイズの極小チップ部品や、狭いピッチで並ぶQFPのリード間など、微細な部分のはんだ付け状態を人の目で正確に判別し続けるのは容易ではありません。さらに、検査員のスキルや体調、集中力の違いによって検査品質にばらつきが生じるリスク、いわゆるヒューマンエラーも避けられません。
こうした課題を解消するために導入されるのがAOIです。機械による検査は疲労の影響を受けず、設定された基準に基づいて24時間安定した検査を行えます。その結果、微細な不良の見逃しを防ぎつつ、検査品質を高水準で均一化することが可能になります。
基板リワークの成否は、作業前後の状態をいかに正確に把握できるかにかかっています。リワーク作業を行う前段階でAOIを使用することで、どの部品がどのような理由で不良か(はんだブリッジや部品の傾きなど)を、客観的なデータとして正確に特定可能です。これにより、作業者は問題箇所だけに集中し、効率的に作業を進められます。そして、部品の取り外しや再実装といったリワーク作業が完了した後、再びAOIによる検査を行うことが極めて重要です。この工程により、リワークが正しく行われたか、はんだ付けが適切に完了しているか、さらには作業中に新たな不良(周囲の部品への影響や微細なはんだボールの発生など)を生んでいないかを厳しく検証できます。
基板リワークの作業においては、特に微細なはんだ付け不良が発生しやすいリスクが伴います。手作業やリワーク装置による加熱・実装プロセスでは、狙った箇所以外に微量のはんだが飛散したり、隣接するパッド間に意図しないブリッジ(短絡)が形成されたりすることがあります。また、部品の電極下で見えない部分に「ボイド(空洞)」が発生している可能性も否定できません。これらは製品の動作不良に直結する深刻な問題ですが、目視では発見が極めて困難です。AOIは、このような微細なはんだの異常や形状の変化を光学的に鋭く捉える能力を持っています。リワーク後の最終確認としてAOIを通すことで、人の目では見逃してしまうような致命的な不良の流出を防ぎ、基板の品質と信頼性を大幅に高めることができます。
AOIは、単に不良品を見つけ出すためだけの装置ではありません。AOIが検出した不良の傾向や発生箇所といった検査データを蓄積・分析し、リワーク作業そのものの品質改善に役立てることが可能です。例えば、特定の手順でリワークを行った基板で、常にはんだブリッジが多発しているというデータが得られた場合、リワーク装置の加熱温度プロファイルや、使用するフラックスの量・塗布方法に問題があるのではないか、といった具体的な原因究明が求められます。このように、AOIからの客観的なデータをリワークプロセスにフィードバックし、作業標準や条件を見直していくことで、不良の再発を防ぎ、リワーク作業全体の精度と安定性の向上が期待できるのです。
AOI(自動光学検査)は、高精度カメラと画像処理技術を用いて、基板上の部品実装状態やはんだ付け品質を自動で検査する装置です。人間の目では見逃しがちな微細な不良を高速かつ安定した基準で検出できます。基板リワークにおいては、作業前の不良箇所の正確な特定と、リワーク後の仕上がり検証という両方の側面で不可欠な存在です。AOIを活用することは、不良流出の防止はもちろん、検査データを分析して作業プロセス自体を改善し、リワークの品質と信頼性を高める上で非常に重要です。
リワーク装置の新規導入・追加(入れ替え)にあたって、リワークが必要な対象製品ごとに、
おすすめのメーカー(海外メーカー代理店含む)及び製品をご紹介しています。
基盤が使われている製品によって特徴や仕様が大きく異なるので、
適切なリワーク装置を導入して作業効率の最適化を図りましょう。