基板リワークにおけるボイド(空洞)は、製品の信頼性や熱伝導性に悪影響を及ぼします。本記事ではボイドの発生要因を科学的に解説し、製造・リワーク工程において有効とされる対策方法についてご紹介します。
基板リワークにおいてボイドが形成される主な要因は、加熱時に発生するガスです。これは、はんだペーストに含まれるフラックスの溶剤や活性剤が揮発・分解して発生するガスが最もよく知られています。しかし、見過ごされがちで、より深刻な原因となるのが基板や電子部品自体が吸収した水分の気化です。特にリワーク時には、保管中に吸湿した水分が急激な加熱で水蒸気となり、はんだ内部に閉じ込められるケースが多く見られます。
これらの発生したガスが、リードレスパッケージ(LGA、QFNなど)のような部品と基板の隙間が狭い密閉構造下では、外部へ逃げることができません。ガスの逃げ場がない状態が続くと、溶融したはんだ内に空洞が生じ、それが冷却後も残存することでボイドとして観察されます。こうしたボイドは、接合強度や通電性能の低下、特に放熱経路の阻害を招き、最終製品の信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
LGAやCSPといった構造をもつ部品は、はんだ付けの際にガスが部品下に物理的に閉じ込められやすい特性を持っています。特に、部品中央に配置された大きな放熱パッドは、溶融したはんだが「蓋」のように機能し、内部で発生したガスや空気を効率的に捕捉してしまうのです。リフロー加熱中に生じたガスが外部へ逃げる経路を確保できないと、微細なボイドが多数発生し、これらが連結して大きな空隙を形成する恐れもあります。ボイドが集中する箇所では、熱伝導性が著しく低下するだけでなく、繰り返しの加熱や振動によるはんだクラックのリスクも高まるため、構造的な特徴に応じた対策が必要です。
加熱プロファイルの設計は、ボイド対策において極めて重要な要素です。特に、はんだが溶融する前のプリヒート(ソーク)段階で十分な時間を確保することが効果的です。150℃〜200℃の温度帯で一定時間保持することにより、フラックスの揮発成分や潜在的な水分を、接合部が密閉される前に穏やかに蒸発させることができます。これにより、はんだ内に閉じ込められるガス量を大幅に削減できます。
また、上下ヒーターの温度差を適切に設けることで、はんだの流動性が改善され、ガスの排出を促進する効果も期待できます。さらに、加熱後の冷却工程においても、毎秒2〜4℃程度の適切な冷却速度を保つことで、熱衝撃を避けつつ良好なはんだ組織を形成し、信頼性を高めることが可能です。
使用するはんだペーストの品質や部材の状態は、ボイド発生の程度に直結します。揮発成分の少ない低ボイドタイプのペーストを選定すると共に、ペーストが吸湿や酸化を起こさないよう、冷蔵保管や使用期限の管理を徹底することが基本です。
さらに、ボイド対策として広く採用され、非常に効果的なのがベーキング(脱湿乾燥)処理です。リワーク前に基板や部品を120℃前後で数時間ベーキングすることで、内部に吸収された水分を事前に除去し、リフロー時の水蒸気発生を根本から防ぎます。
LGAやQFNの大きな放熱パッドに対しては、ステンシル設計の工夫が有効です。開口部をベタで印刷するのではなく、複数の小さな領域に分割する「ウィンドウペイン(窓枠)型」の設計にすることで、リフロー中にはんだが合体する過程でガスの逃げ道が確保され、ボイドを削減できます。
そして、リワーク品質を客観的に評価するためには、X線検査装置の導入が不可欠です。目視では確認できない内部欠陥を非破壊で可視化できるため、品質のばらつきを抑えることができます。その際、IPC-A-610などの国際規格で定められた「ボイドの面積率が25%未満」といった客観的な品質基準に照らして合否を判断することが、高い信頼性を確保する上で重要となります。
LGA部品は構造上ボイドが発生しやすいですが、これをリボールしてBGA化することで、部品下に明確な隙間(スタンドオフ)が確保され、ガスの排出が容易になります。この手法はボイド削減に非常に効果的です。ただし、接合部の形状が変わることで熱サイクルに対する機械的強度が変化する可能性もあるため、製品に求められる長期信頼性を考慮した上で採用を検討すべき高度な対策と言えます。
基板リワークにおけるボイドの抑制には、複数の技術的アプローチを組み合わせた対応が欠かせません。加熱プロファイルの工夫や脱湿処理、さらにはステンシルの設計やX線検査の活用など、それぞれの工程で有効な対策を講じることが、製品全体の信頼性を向上させる鍵となります。また、IPC規格に準拠した客観的な品質評価を取り入れることで、出荷後の不具合リスクを最小限に抑えることも可能です。
リワーク装置の新規導入・追加(入れ替え)にあたって、リワークが必要な対象製品ごとに、
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基盤が使われている製品によって特徴や仕様が大きく異なるので、
適切なリワーク装置を導入して作業効率の最適化を図りましょう。