リワーク後のはんだ接合品質にばらつきがあったり、原因不明の不良にお悩みではありませんか? 特にBGAなどの微細部品では、リワークプロセスの違いが品質に直結します。この記事では、リワークにおける「ソーク」の役割、重要性、そして不適切な設定が引き起こす問題を解説します。
リワークの温度プロファイルは通常、「予熱(プリヒート)」「ソーク」「リフロー」「冷却」の段階で構成されます。「ソーク(Soak)」は、予熱の後、はんだが溶けるリフロー段階の前に、特定の温度範囲で一定時間温度を保持する期間です。これは単なる「待ち時間」ではなく、高品質なリワーク達成のために複数の重要な目的を持っています。
ソーク段階の最重要目的は「温度均一化」です。リワーク対象の部品、基板、周辺部品は材質や形状が異なり、熱容量にも差があるため、単純加熱ではエリア内に大きな温度差が生じます。この温度差が大きいままリフローに進むと、はんだが均一に溶融せず、接合不良の原因となります。
ソークで一定時間温度を保持することで、熱容量の大きい部分にも熱が伝わり、エリア全体の温度が均一に近づきます。これにより、リフロー時にはんだがほぼ同時に溶融し、信頼性の高い接合形成が可能になります。また、急激な温度変化による熱ストレスも緩和され、部品クラックや基板反りといった熱ダメージのリスクも低減。特に熱容量が大きい、あるいは熱が伝わりにくい対象(大型BGA、多層基板など)のリワークでは、このプロセスが極めて重要です。
ソーク段階のもう一つの重要な役割は、はんだペースト中の「フラックス」の活性化です。フラックスは、はんだ付け対象の金属表面(電極やランド)の酸化膜を除去し、溶融はんだの濡れ性(広がりやすさ)を向上させます。良好な濡れ性は、確実な接合を形成する上で不可欠です。
多くのフラックスは、ソークで設定される温度帯で効果的に機能します。ソーク中に十分な時間をかけることでフラックスが活性化し、金属表面の酸化膜を効率的に除去できるためです。その結果、続くリフロー段階で溶けたはんだが弾かれることなく、きれいに濡れ広がり、良好なフィレット(はんだの接合形状)が形成されやすくなります。
これら「温度均一化」と「フラックス活性化」により、ソーク段階はリフロー段階を成功させるための重要な下準備となります。温度が均一で、フラックスが活性化された状態であれば、リフロー時の熱衝撃リスクも低減され、はんだ未溶融、濡れ不良、ボイドといった接合不良を防ぐことに繋がります。ソークは、リフロー品質を安定させるための土台作りと言えるでしょう。
ソーク時間が短すぎたり、温度が低すぎたりする「ソーク不足」では、ソーク本来の役割が果たされません。
エリア内の温度差が大きいままリフローに進むと、はんだが均一に溶融せず、部分的な未溶融や濡れ不良が発生しやすくなります。特にチップ部品では、両端の温度差から部品が立ち上がる「ツームストーン現象」のリスクが高まります。
フラックスが十分に活性化しないと酸化膜が除去されず、はんだの濡れ性が低下します。これにより、接合強度が不足する「コールドジョイント」や、はんだ内部に空隙が残る「ボイド」が発生しやすくなり、製品の長期信頼性を低下させます。
逆に、ソーク時間が長すぎたり、温度が高すぎたりする「ソーク過剰」も問題です。
必要以上の高温に長時間さらされると、部品や基板への熱ストレスが増大します。吸湿したICパッケージ内部の水分が気化しクラックを生じさせる「ポップコーン現象」や、基板の変色、反り、層間剥離といった深刻なダメージを引き起こす可能性があります。
フラックスは高温に長時間さらされると効果を失ったり、消耗したりします。リフロー時にフラックスの効果が薄れていると、はんだの酸化や濡れ不良の原因となりえます。
金属間化合物(IMC)層は、はんだと電極(金属)との間に形成され、接合に不可欠な構造です。ただし、高温に長時間さらされるとこの層が過剰に成長し、脆く割れやすい構造となって、接合部の信頼性を低下させる可能性があります。
まず部品やはんだメーカー推奨のプロファイルを確認します。その上で基板特性や装置性能を考慮し、熱電対などで実測しながら目標プロファイルに近づけるよう調整します。
理論だけでは最適値は出ません。実際にリワークし、断面観察やX線検査で品質を確認し、必要に応じてソーク条件を微調整するプロセスが重要です。
管理職としては、個々の経験に頼らず、検証に基づいた最適な温度プロファイルを標準化し、遵守できる体制を整えることが求められます。設定したプロファイルを高精度かつ安定して再現できるリワーク装置の選定・維持管理も重要なポイントです。
リワークプロセスにおけるソーク段階は、単なる温度保持期間ではなく、「温度均一化」と「フラックス活性化」という、高品質なはんだ接合を実現するための役割を担っています。適切なソーク設定と管理は、ツームストーン現象、濡れ不良、熱ダメージといった様々なトラブルを未然に防ぎ、リワーク作業の成功率と製品全体の信頼性を向上させる鍵となります。
ソーク不足もソーク過剰も、それぞれ深刻な品質問題に繋がる可能性があります。対象となる部品、基板、はんだ、装置の特性を理解し、データに基づいたプロファイルの最適化と、それを正確に実行・管理するプロセスを確立することが、高品質リワークへの確実な道筋です。日々の業務において、この「ソーク」の重要性を再認識し、その管理に注意を払うことが、品質改善への大きな一歩となるでしょう。
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