近年、電子機器の製造・修理において、「鉛フリーはんだ」の使用が一般的になっています。RoHS指令などの環境規制により、従来の鉛を含むはんだ(共晶はんだ)から鉛フリーはんだへの移行が進んでいるためです。
本記事では、鉛フリーはんだの基礎知識から、鉛フリーはんだに対応したリワーク装置の選び方、そしてリワーク作業を成功させるためのポイントまで、詳しく解説していきます。
鉛フリーはんだとは、その名の通り、鉛(Pb)を含まないはんだのことです。電子機器の製造において、環境や人体への影響を考慮し、RoHS指令などの法規制によって鉛の使用が制限されるようになったことから、鉛フリーはんだが広く普及しました。
従来使用されてきた共晶はんだ(Sn-Pb系)は、融点が約183℃と低く、濡れ性も良好であるため、はんだ付け作業が比較的容易でした。
一方、鉛フリーはんだは、主に錫(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)などを主成分とする合金で(Sn-Ag-Cu系が代表的)、融点が217℃~220℃程度と高くなります。また、一般的に濡れ性が共晶はんだよりも低いため、はんだ付けの難易度が高くなる傾向にあります。
鉛フリーはんだを使用するメリットは、環境負荷を低減できる点、そして法規制に対応できる点です。一方で、リワーク作業の難易度が上がる、場合によってはコストが増加する可能性がある、といったデメリットも存在します。
鉛フリーはんだは融点が高いため、精密な温度制御が可能な装置が必要です。温度プロファイル(時間と温度の関係)を細かく設定・管理できる機能があると、より高品質なリワークが実現できます。
リワーク装置の加熱方式には、熱風式、赤外線式、ハイブリッド式(熱風と赤外線を組み合わせた方式)などがあります。それぞれに特徴があり、対象となる基板や部品の種類、作業内容によって適切な方式を選択する必要があります。
部品の形状やサイズに合わせて、適切なノズルを選択することが重要です。鉛フリーはんだは濡れ性が低いため、ノズルと部品の密着性を高める工夫がされているノズルもあります。
画像認識機能があると、部品の位置ずれを自動で検出し、正確なリワーク作業をサポートしてくれます。特に微細な部品のリワークには有効です。
自動化機能が充実しているほど、作業者の負担を軽減し、作業の効率化と品質の安定化を図ることができます。
鉛フリーはんだの特性に合わせた適切な温度プロファイルを設定することが重要です。急激な温度変化は基板や部品にダメージを与える可能性があるため、注意が必要です。
基板全体を予熱することで、リワーク時の温度差を小さくし、部品や基板への熱ストレスを軽減できます。
鉛フリーはんだ用の適切なはんだペーストを選定し、適切な量を塗布します。
部品の取り外しや取り付けの際には、過度な力を加えたり、急激な温度変化を与えたりしないように注意します。
リワーク後は、外観検査やX線検査などを行い、はんだ付けの状態をしっかりと確認します。ブリッジ(はんだの短絡)、ボイド(はんだ内部の空洞)、部品浮きなどの不良がないかを確認しましょう。
鉛フリーはんだのリワークは、環境配慮の観点から重要ですが、従来のはんだより難易度が高めです。成功には、適切なリワーク装置の選定が不可欠であり、温度制御、加熱方式、ノズルなどを考慮しましょう。
鉛フリーはんだの特性(高融点、低濡れ性)を理解し、温度プロファイル設定と予熱を適切に行うことが重要です。各工程で丁寧な作業を心がけ、リワーク後は必ず検査を実施し、品質を確認しましょう。
以下のページでは、リワーク装置の特徴から選べるようにおすすめリワーク装置メーカーを紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
【サイトに掲載する会社について】
2021年11⽉時点、Googleで「リワーク装置」と検索し、検索結果10ページまでに表示された、リワーク装置メーカー9社、リワーク受託業者(EMS)19社をこのサイトに掲載しています。
本サイトに掲載する各社の情報は、公式HPを情報元としています。
【3社の選定理由】
メイショウ…「スキルレスな位置合わせ機能」「自動はんだクリーニング機能」「テスト基板不要の温度プロファイル機能」といった、スキルがない人でも操作可能な機能がリワーク装置メーカーの中で最も多い(標準仕様)。
ダイナテックプラス…世界130ヶ国以上に装置を展開しており、ツール型からステーション型まで9種類の製品を提供している(2021年11⽉時点) 。
シンアペックス…「フルBGAパターン」「ペリメーターBGAパターン」「千鳥パターン」「リードパターン」といった、ピッチにあわせてはんだ除去する機能がリワーク装置メーカーの中で最も多い。