リワーク工程において、作業の精度と安定性を保つためには、対象となる電子基板をしっかりと保持するための「基板ホルダー」が欠かせません。見落とされがちですが、この治具の選定と使い方次第で、作業効率や製品の信頼性に大きな差が生まれます。本記事では、基板ホルダーが果たす役割や、リワーク用途に適した選び方、さらに安定稼働を実現する運用上のポイントについて解説します。
基板ホルダーとは、電子基板をリワークや実装工程中に安定して固定するための専用治具のことを指します。特にリワーク作業では、基板上の部品を加熱して取り外したり再実装したりするため、わずかなズレや振動が品質不良につながることがあります。そうしたトラブルを防ぐために、ホルダーの存在が不可欠です。
多くの基板ホルダーは、耐熱性の高い樹脂やアルミニウム合金などを素材に採用しており、加熱中でも基板を変形させることなく安定して保持できます。また、作業者が静電気を帯びたまま作業を行うと、基板や電子部品が破損する恐れがあるため、静電気対策が施された製品を選ぶことも大切です。
BGAやQFNといった微細なパッケージを扱う場面では、位置精度が作業の成否を左右します。そのため、基板をしっかりと固定できるホルダーの使用が、リワーク精度を保つ上で非常に重要な役割を果たしています。
リワーク用の基板ホルダーを選ぶ際には、基板のサイズや形状に柔軟に対応できる構造かどうかを確認することが基本です。市販の汎用タイプでは、可変式のクランプ機構やスライド調整によって、複数サイズの基板に対応できるものがあります。一方で、頻繁に同じ基板を扱う場合には、専用のカスタム治具を用意することで、作業効率が大幅に向上するケースもあります。
使用環境に合わせた素材の選定も欠かせません。たとえば、ホットエアや赤外線ヒーターを用いるリワークでは、熱に強く、かつ変形しにくい素材が求められます。また、はんだフラックスや洗浄剤が付着することもあるため、耐薬品性の高い製品を選ぶことで、長期間の使用でも品質を保つことができます。
作業性の観点からは、基板の脱着がスムーズに行えるかどうか、調整に手間がかからない構造であるかも重要です。作業時間が限られる現場では、工具不要で固定できるクイックロック式のホルダーが好まれる傾向にあります。
基板ホルダーを最大限に活かすためには、正しい取り付けと調整が必要です。固定が甘いまま作業を進めると、加熱中に基板が動いてしまい、想定外のダメージや不良が発生することがあります。そのため、ホルダーを使用する前には、基板との接触面をしっかり確認し、押さえ圧を均一にかけるように意識することが大切です。
繰り返しの使用により、ホルダー本体や固定具には摩耗や汚れの蓄積が見られます。この状態を放置した場合、固定力が弱まり、安定した作業が行えなくなるリスクが生じかねません。定期的な清掃や、可動部の潤滑、部品交換などのメンテナンスを行うことで、治具の寿命を延ばすことにつながります。
ホルダーの劣化が進んだ場合には、見た目での判断が難しいこともあるため、一定の使用期間ごとに交換を検討することも品質維持の観点から有効です。基板の損傷や作業ミスが発生してから対応するのではなく、予防的な管理を行うことが、安定したリワーク作業につながります。
基板ホルダーはリワーク工程において欠かすことのできない重要なツールです。選定段階から活用方法、運用メンテナンスまでを適切に行うことで、作業品質と効率性の両立が可能となります。製品に求められる信頼性がますます高まる中、基板ホルダーの運用を見直すことは、現場改善の第一歩といえるでしょう。
【サイトに掲載する会社について】
2021年11⽉時点、Googleで「リワーク装置」と検索し、検索結果10ページまでに表示された、リワーク装置メーカー9社、リワーク受託業者(EMS)19社をこのサイトに掲載しています。
本サイトに掲載する各社の情報は、公式HPを情報元としています。
【3社の選定理由】
メイショウ…「スキルレスな位置合わせ機能」「自動はんだクリーニング機能」「テスト基板不要の温度プロファイル機能」といった、スキルがない人でも操作可能な機能がリワーク装置メーカーの中で最も多い(標準仕様)。
ダイナテックプラス…世界130ヶ国以上に装置を展開しており、ツール型からステーション型まで9種類の製品を提供している(2021年11⽉時点) 。
シンアペックス…「フルBGAパターン」「ペリメーターBGAパターン」「千鳥パターン」「リードパターン」といった、ピッチにあわせてはんだ除去する機能がリワーク装置メーカーの中で最も多い。