基板リワークにおいて、部品実装の品質を大きく左右するのが「レベリング」です。パッドに残ったはんだを平坦にならすこの工程は、特にBGAなどの微細部品で重要性を増します。本記事では、基板リワークにおけるレベリングの必要性から、精度を高めるための方法、作業時の注意点を解説します。
基板リワークで部品を取り外した後のランド(パッド)には、目に見えない古いはんだや酸化膜が残っていることがあります。レベリングは、これらの残はんだを均一に整え、新しいはんだがよく馴染む表面状態にする工程です。この処理によって、はんだの濡れ性が向上し、再実装する部品との間で強固な接合が実現しやすくなります。また、ランド上のはんだ量を均一に整えることで、リフロー時にはんだが溶融した際に発生しやすいボイド(空隙)のリスクを低減させる効果もあります。ボイドは接合強度を低下させ、長期的な信頼性を損なう原因となるため、レベリングはリワーク品質の根幹を支える工程と言えるでしょう。
部品の底面に格子状に多数のはんだボール(バンプ)が配置されたBGAやCSPといったパッケージは、その構造上、レベリングの精度が実装品質に直結します。もしレベリングが不十分でランドの高さがバラバラの状態だと、リフロー時に一部のはんだボールがランドに届かず接合しない「オープン不良」を引き起こす可能性があります。逆に、はんだが多すぎれば、溶融した際に隣接するボールと接触して「ブリッジ不良(ショート)」の原因にもなりかねません。すべてのランドが同一平面上にある状態、すなわち高い「コプラナリティ」を確保することが、BGA/CSPのリワークを成功させるための絶対条件です。精密なレベリングこそが、数百ピンにも及ぶ接続を一度に、かつ完璧に形成するための鍵となります。
レベリングによって平坦に整えられたランドは、部品を再搭載する際の精度を向上させるという側面も持ち合わせています。特に、高密度な基板で自動マウンターを用いて部品を搭載する場合、ランド表面が平滑であることは、部品を正確な位置へ安定して設置するための重要な基盤となるでしょう。さらに、リフロー工程では、溶融したはんだの表面張力によって部品が自ら正しい位置に引き寄せられる「セルフアライメント効果」が働きますが、この効果は、各ランドのはんだ量が均一で、平坦にレベリングされていてこそ最大限に発揮されるのです。したがって、レベリングは単なる残はんだの除去作業ではなく、実装プロセス全体のスムーズな進行と最終的な搭載精度を保証するために不可欠な工程と言えます。
最も一般的で基本的なレベリング方法が、はんだごてとはんだ吸い取り線を組み合わせた手作業です。この手法では、まず作業対象のランドにフラックスを適量塗布します。フラックスは、はんだの酸化膜を除去して流動性を高め、スムーズな除去を助ける役割を果たします。
次に、ランドの上に網目状の銅線であるはんだ吸い取り線を置き、その上から適切な温度に設定したはんだごてを当てて加熱します。すると、ランド上の残はんだが溶けて毛細管現象により吸い取り線へと吸収されていきます。はんだが十分に吸い取られたことを確認したら、はんだごてと吸い取り線を同時に、かつ素早くランドから離すのがコツです。この一連の作業により、ランド表面を平坦な状態に整えることができます。
より高精度で均一な仕上がりが求められる場合や、作業効率を重視する際には、リワーク装置に搭載された専用のレベリングツールが非常に有効です。これにはいくつかの方式があります。例えば、ホットエアーで残はんだを溶かし、真空ノズルで吸引する非接触式のクリーニングツールです。この方法は基板やランドに物理的なストレスを一切与えることなく、安全にレベリングを行える利点があります。もう一つは、特殊な形状のこて先を持つ接触式のツールを用いる方法です。こちらは、溶融したはんだを機械的に掻き取るようにして、より積極的に平坦化を進めることができます。これらの専用ツールは、手作業では難しい微細なランドのレベリングや、多数のランドを一度に処理する場面で大きな力を発揮します。
レベリング作業の品質は、使用するフラックスの種類とその使い方によって大きく変わってきます。フラックスは単にはんだの除去を助けるだけでなく、仕上がりの美しさや後の工程にも影響を及ぼすため、その選定は慎重に行うべきです。例えば、作業後に残渣(ざんさ)が残りにくいタイプのフラックスや、洗浄が容易なタイプのフラックスを選ぶことで、洗浄工程の手間を削減し、基板の清浄度を高めることにつながります。また、フラックスを塗布する量も重要です。適切な量のフラックスは、溶融したはんだの表面張力を最適にコントロールし、ランド表面をより滑らかで平坦な状態に仕上げる手助けをします。このように、目的に合ったフラックスを選び、正しく使用することが高精度なレベリングを実現する上で欠かせません。
レベリング作業は、はんだごてやホットエアーでランドを直接加熱するため、熱によるダメージには細心の注意を払う必要があります。必要以上に高い温度で、あるいは長時間にわたって加熱を続けると、ランドが基板から剥がれてしまうことや、基板内部の層が剥離する「デラミネーション」といった致命的な損傷を引き起こす恐れがあります。作業は可能な限り短時間で完了させることを心がけ、周辺に実装されている他の電子部品へ熱が伝わらないよう配慮することも忘れてはなりません。特に耐熱性の低い部品が近くにある場合は、マスキングを行うなどの保護措置が求められます。適切な温度管理と迅速な作業が、基板の健全性を保つ上で極めて重要です。
レベリング作業で使用したフラックスの残渣は、作業後に必ず完全に取り除く必要があります。もし残渣が基板上に残ったままだと、空気中の水分を吸収して腐食の原因となったり、電圧がかかる部分で金属イオンが移動して絶縁不良を起こす「イオンマイグレーション」という現象を引き起こしたりする可能性があります。これらの問題は、製品の動作不良や寿命の低下に直結するため、決して軽視できません。洗浄には、イソプロピルアルコール(IPA)などの専用洗浄液を使用し、ブラシや綿棒を使って丁寧に除去します。特に、微細な部品の下や端子の隙間などは残渣が残りやすいため、念入りな洗浄と乾燥が求められるのです。
レベリング作業が完了したら、必ずその仕上がりを検査し、品質を確認する工程が不可欠です。通常はマイクロスコープや拡大鏡を用いて、ランドの状態を詳細に観察します。主な確認項目は、ランド表面が滑らかで凹凸がないかという「平坦性」、古い合金層や余分なはんだが完全に除去されているかという「残はんだの有無」、そしてランド自体に剥がれや傷、過度な加熱による変色がないかといった「ランドの損傷」です。これらの目視検査をクリアして、初めてレベリングが正しく完了したと言えます。さらに、BGAのような目視できない部分のリワークにおいては、X線検査装置を使用して、再実装後のはんだ接合部の内部にボイドなどの欠陥がないかを確認することもあります。
基板リワークにおけるレベリングは、単なる残はんだの除去ではなく、部品実装の信頼性と基板全体の品質を支える重要工程です。BGAやCSPなど微細部品の精密な接合を実現するためには、手作業や専用ツールによる高精度なレベリングが欠かせません。また、フラックス選定や洗浄、熱ダメージの管理、外観検査といった注意点を守ることで、再実装後の信頼性を確保できます。ポイントをおさえて実践することで、高品質で安定した基板リワークが可能になります。
リワーク装置の新規導入・追加(入れ替え)にあたって、リワークが必要な対象製品ごとに、
おすすめのメーカー(海外メーカー代理店含む)及び製品をご紹介しています。
基盤が使われている製品によって特徴や仕様が大きく異なるので、
適切なリワーク装置を導入して作業効率の最適化を図りましょう。